第5話
 私が思案している間にも、おねえさんはどんどん私の手を引き進んでいく。
 カンロアメの店はどんどん遠ざかり、開けた場所へと近づいていった。

 元々はこの町の広場だろうか?
 その広場の中心に向かって大勢の人集りができていた。

 群衆の目線の先には、巨大な金属か何かの塊と、下着姿に近い逞しい体つきをした男が一人。
 その少し離れた位置に立っているつば広帽をかぶった男が叫んでいる。

「さぁー!! 次に挑戦するのは!? こいつだァー!! はるばるアーモリから来たという力自慢!! なんと!! ネブターを一人で持ち上げたという男です!!」

 ネブターというのが何か、アーモリが何処かは知らないが、中央に立つ男は見た目通り力自慢のようだ。
 博識なザードあたりに聞けば、どちらも教えてくれるかもしれないが、残念ながら今はいない。

「あ! そうだ‼︎ ブレイブたちを助けにいくところだった‼︎」

 突然本来の目的を思い出し、私は思わず大声をあげる。
 その声におねえさんは振り向き、顔の高さを合わせるように屈んでから、私に聞いてきた。

「ブレイブ? それは誰かな? お父さんの名前? 助けるってどういうこと?」
「えーっと……そういうのじゃなくて……あぁ! もう‼︎」

 相手が納得する説明をするというのは、私が大の苦手とするところだった。
 もう、カンロアメのことはすっぱり諦めて、手を振り解きその場を去ろうとした時、周囲から悲鳴が上がった。

「逃げろー‼︎」