もともと私は背の小さい方だが、こんなに差があっただろうか。

「というわけではないよ。アリシアちゃん。そんな男、めちゃくちゃ怪しいじゃないか」

 魔王討伐を志すパーティのリーダー、ブレイブが困ったような顔をしながら言う。
 金髪碧眼の美男子。街を歩けば、若い女性なら十人中十人が振り返るだろう。

 さらにブレイブは国王から勇者の称号を賜るほどの実力者だ。
 身につけた白銀に輝く長剣と鎧は、ブレイブの魅力をさらに増す。

 ブレイブに続くように、同じくパーティメンバーの一人で、魔導士のザードが口を開く。
 こちらは黒目黒髪の優男だが、ブレイブとは違った魅力がある。

「だから僕はいっつも口を酸っぱくしていっているじゃないですか。アリシアちゃんは迂闊(うかつ)すぎますよ。いくら街の通りとは言え、夕方以降の裏通りは女の子が一人で歩くには危険すぎます。それに――あ、そんな顔しないでください。カンロの実をあげますから」

 カンロの実というのは、指先くらいの大きさの黄色い木の実で、舐めるととても甘く、この国の子供たちの典型的なおやつの一つだ。