「と、言っても。ぶっちゃけ何処にいるかも、本当にいるのかも分からない魔王を討伐するってのも無茶な話よねー」

 私は身もふたもないことを呟きながら、さらに西へと進んだ。



「ここが洞窟に最も近い町かしら……何だかずいぶんな人だかりだけれど……」

 今回の討伐は、この町から出された討伐依頼をブレイブたちが受けたのがきっかけだった。
 討伐依頼は、町の周辺で魔族や魔獣たちの根城が発見された際に出される依頼だ。

「さー! 会場はあっちだよ‼︎ 力自慢もそうじゃないみんなも! 一度は記念に挑戦してみてねー‼︎」

 町に入ると、どうやら何かの祭りの最中だということが見て取れた。
 通りは人だかりができていた。

「わー祭りだ! カンロアメあるかしら?」

 カンロアメというのは、カンロの実をすり潰して、粘性のある液を煮詰めてから冷やして固めたもの。
 カンロの実をそのまま食べるより、ずっと甘く美味しいけれど、祭りのような祝い事の時にしか市場には出ない。