第1話
「そこの美しいお嬢さん。そう、そこのあなただよ。いいものがあるんだ。見ていってよ」

 街の通りを一人とぼとぼと歩く私――アリシアの耳に呼び掛けが聞こえたのは、日も落ち始めた夕暮れ時だった。
 声のした方を振り向けば、酒場の入り口の魔力灯に照らされた軒先に、路上に広げた敷物の上に座った男が一人。

「そうそう。あなただよ。綺麗なお嬢さん。ぜひ見ていって欲しいものがあるんだ。そんなに遠くちゃ見えないだろう。もっとこっちへおいでよ」

 男の目の前には古い羊皮紙か何かの巻物が一つ。
 私は何故か巻物が気になってついつい男の前に足を運んでしまった。

「さぁさぁ。これは麗しいお嬢さんにだけ売るとっておきだよ。絶対に損はさせない。なんと、自分の能力を超々強化させる秘法だよ! さぁ、買っておくれ」



「というわけで買って、早速さっき起き抜けに使ってみたわ‼︎」

 昨日の夕方の出来事を嬉々として話す私。
 何故か私に向けられる同じパーティのメンバーたちの目線は、奇妙なものだった。

 それにしても何故かみんないつもより背が妙に高く感じる。