スクールアイドル防衛隊〜通行人A子と弱虫王子〜

「それは・・・大変(たいへん)だったね。」
 
 ミヤさんが控(ひか)えめに言うと、花菱(はなびし)先輩(せんぱい)は大丈夫(だいじようぶ)とでも言(い)いたげに微笑(ほほえ)む。

「今(いま)はオレも合気道(あいきどう)習(なら)い始(はじ)めたから、ある程度(ていど)なら対処(たいしよ)できるよ。昔(むかし)はトロくて運動音痴(うんどうおんち)だったけど、今(いま)はそうでもないし。
そういうことが怖(こわ)いのは、変(か)わらないけど。」

 監禁(かんきん)に誘拐(ゆうかい)・・・いまいち現実味(げんじつみ)がわかないけれど、きっと物凄(ものすご)く怖(こわ)かったんだろうな。

 それがよくあるって、やっぱり綺麗(きれい)すぎるのも大変(たいへん)なんだ。

「とりあえず、飲(の)みなよ。冷(さ)めちゃうから。」

 進(すす)められて、口(くち)をつけた。

 ・・・美味(おい)しい!

 今(いま)まで紅茶(こうちや)なんて甘(あま)いものしか飲(の)んでこなかったけど、この紅茶(こうちや)は砂糖(さとう)が無(な)くても美味(おい)しかった。

 ほんのり甘(あま)い香(かお)りがする。

 嗅(か)いだことある匂(にお)い、もしかしてバニラ?

「バニラの入(はい)ったフレーバーティー。砂糖(さとう)とミルクいる?」

「だいじょーぶ。おいしいね、これ!」

 ミヤさんが香(かお)りを楽(たの)しんでから微笑(ほほえ)む。

 ミヤさんって、こういう仕草(しぐさ)、本当(ほんとう)に綺麗(きれい)だな。

 紅茶(こうちや)飲(の)むとき、一切(いつさい)音(おと)立(た)ててないの。

 姿勢(しせい)もきれいだから、上品(じようひん)に見(み)える。

 やっぱりミヤさんもお金持(かねも)ちなのかなぁ。

 教養(きようよう)がある感(かん)じがする。

 それは花菱(はなびし)先輩(せんぱい)も同(おな)じで、飲(の)み方(かた)が凄(すご)い綺麗(きれい)で上品(じようひん)なんだ。

 まるでそこだけ空間(くうかん)が違(ちが)うみたい。

 背景(はいけい)に薔薇(ばら)の花(はな)が見(み)えそうだ。

 私(わたし)も二人(ふたり)に習(なら)って、精一杯(せいいつぱい)上品(じようひん)に見(み)えるように紅茶(こうちや)を飲(の)む。

 あちっ、音(おと)を立(た)てずに飲(の)むのって凄(すご)い難(むずか)しいし、熱(あつ)い!

「この紅茶(こうちや)、好(す)きなんだ。気(き)に入(い)ってもらえてよかった。ガトーショコラも食(た)べてみてよ。一応(いちおう)、有名店(ゆうめいてん)の物(もの)らしいから。」

 ガトーショコラにフォークを入(い)れる。

 パクリと口(くち)に入(い)れると、濃厚(のうこう)なチョコの香(かお)りと甘(あま)みが口(くち)いっぱいに広(ひろ)がった。

 ん〜! 凄(すご)い美味(おい)しい!

 有名店(ゆうめいてん)の物(もの)って納得(なつとく)の美味(おい)しさだ。

 ここまで美味(おい)しいガトーショコラ初(はじ)めて食(た)べたもの。

「美味(おい)しい!」

 思(おも)わず声(こえ)に出(だ)せば、花菱(はなびし)先輩(せんぱい)はにこりと微笑(ほほえ)んだ。

「それはよかった。」

 はぁぁ・・・なんだか凄(すご)く贅沢(ぜいたく)してる気分(きぶん)。

 タワーマンションの最上階(さいじようかい)で、絶世(ぜつせい)の美少年(びしようねん)に美味(おい)しい紅茶(こうちや)とケーキを頂(いただ)くなんて、一生(いつしよう)に一度(いちど)あるかないかの経験(けいけん)だ。

 花菱(はなびし)先輩(せんぱい)の微笑(ほほえ)みを見(み)るたびに、綺麗(きれい)だなって思(おも)う反面(はんめん)、自分(じぶん)との落差(らくさ)に悲(かな)しくなってくる。

 花菱(はなびし)先輩(せんぱい)も苦労(くろう)してるんだろうけど、やっぱり、神様(かみさま)って理不尽(りふじん)。