『 えっと、どこにいくの? 』



しばらく沈黙が流れていた車内の空気を変えたくて
素朴な質問をしてみた。



「 港 」

『 港? 』

「 あぁ。」



これ以上は教えませんと言った雰囲気の彼は
スマホへと視線を落として
誰かと連絡をとってるみたい

確実に話し相手にもなってくれなさそうな姿に
ため息をついて窓の外へと視線を移す



『 ここ... 』



おばあちゃんの神社の近くだ。


毎年夏だけ来ていたこの街の唯一覚えている風景が
車の外に広がっている

そろそろ会いに行かなくちゃ。

引っ越しの手伝いやら入学やらで
なかなか遊びにいけなかった。

今年は氏子を少しだけでも手伝いたいなぁ

少し前の記憶が頭の中に流れてくる
あの時の彼は元気かな。

二度と会うことのない彼

何度も夢だったんじゃないかと思う