被写体となっている時の葵の表情はコロコロと変わり、今まで見たこともなかったような彼が、そこにはいた。
いつのまにやら、綾乃の胸の鼓動は速くなっていた。

「(アイツ…ほんと、顔だけは良いのよねぇ)」
「(性格は超イヤミで上から目線で、猫かぶってるだけの性悪男なのに…。でも…まぁ、ありゃーモテちゃうのもわかるから腹立つなぁ…)」

ボーッと眺めているうちに撮影は終了し、カメラマンと葵が片付けながら会話し始める。

「お疲れ、桐矢くん!いやぁ、ほんっと桐矢くんってモデルの素質あるよねぇ!いっそのこと、モデルに転身したら?」

「いやいや、あくまで本業はデザイナーですから(笑)でも…こうしてたまに撮影なんてのも楽しいんで、いい気分転換にさせてもらってます」

そんな話をしながら葵がふと扉の方に向くと、そこにいた綾乃とピッタリ目が合った。
目を丸くした綾乃が気まずそうにその場から立ち去ると、葵はカメラマンに頭を下げてから撮影室を出て行くのだった。

「(ビックリした…いきなりコッチ向くんだもん)」
「(…どうせ、野次馬の女子ばっか見て自惚れてたんだろうけど?!笑)」