「(……って!あんな奴が彼氏なわけないでしょ!!…あんな奴が……っ)」


“店から出て行く時だって、すれ違いざま笑顔で強烈な殺気がこもった目で睨まれたし…甘いマスクのわりにはドS臭が半端ない彼氏だね!(笑)それじゃ、もし彼氏に飽きたらいつでも連絡してね♡”


バーテンくんからのメッセージを最後まで読み終えてから、綾乃は少し考えた。

葵が、バーテンくんに明らかな敵意を示していたこと。
仕事を放ってまで一人で助けに来てくれたこと。

そして、そのことを必死でごまかそうとして、しどろもどろになっていた葵の態度。


「(アイツ、まさか、私のこと……?)」


そんな疑惑が、頭の中をザワつかせる。

いつも顔を合わせるたびに意地悪なことばかり言ってからかう彼。


「(それならどうして、私にだけあんなに意地悪なの?)」