──バーテンくん騒動から数日が過ぎた頃。

オフィスにて。

パソコンのキーボードをカタカタと叩く綾乃のスカートのポケット内でスマホが震えた。

離れたデスクで仕事をしているお局様の方をチラリと横目で確認してから、コッソリとデスクの下の手元でスマホを操作してみる。


「(…ん?バーテンくんからメッセージが来てる)」


もう二度と会う気もない異性からのメッセージに喜ぶわけもないが、とりあえず内容を確認してみる。


“綾乃ちゃん、こないだはいきなりあんなことしてごめん。悪かったと思ってるよ。綾乃ちゃんの初めての男になれなくてちょっと残念だったけど(笑)”


「(…絶対悪いと思ってないでしょ、コイツ)」


“それにしても、彼氏がいるなら最初から言ってくれればよかったのに〜。”


「(彼氏って……そっか、桐矢のこと私の彼氏だと思っちゃったのか)」