「だって、あんたってその顔と色気のおかげでそうとう女の子にもモテてるんだから、選び放題のヤリたい放題なんでしょ、どうせっ!」
「じゃなきゃ、あんたが3年も彼女いない理由なんて他に考えられないもーん」

…軽く、笑い飛ばしたつもりだった。
いつものようにムキになって、ただ“言われたから言い返した”…それだけ。

「しないよ……そんなの」

ところが返ってきたのは、いつもとは少し違う声色(こわいろ)だった。

「え…?」

そんな違和感に反応して葵を見上げると、葵はスッと離れてドアの方へと動き出した。

「お局様ももう行ったことだし、そろそろ仕事戻んなきゃな」
「お前ももう、休憩終わりなんじゃないの?」
「遅れたらお局様がうるさいぞ(笑)」

「あぁ……う、うん」

背中越しの会話の中、綾乃はなんとなくスッキリしないまま仕事へと戻るのだった。