【完】ハッピーエンドに花束を


 でもそれは最初だけで、気付いた時には私も同じように暁人を求める。

 とにかく一生懸命に応えようと必死になっていた私は、いつの間にかベッドに背を預けていた。

 視界には少し息を切らした暁人の姿と、真っ白な天井。ベッドに寝転がっていた私を跨るようにして、彼は上から私を見下ろす。

 だんだんと近づいてくる顔に、私はゆっくりと目を閉じた。

「好きだよ、芽依」
「私も・・・大好き」

 甘い蜜のような声色に、理性がうまく働かなくなる。

 求められたら、追いかけるように私も求めた。苦しくて生理的な涙が浮かんできても、このまま続けたかった。

 ぼんやりと滲む視界の中、いつもよりも余裕のない暁人の顔が見える。こんな顔見るのは初めてだな。こんな状況でも「かわいい」と思って笑っていると、彼は凛とした瞳で私を目を見据えた。

「・・・いい?」
「うん、いいよ」

 その瞬間、腹部の方から入り込んでくる冷たい空気。そして素肌に感じる撫でるような優しい温もり。
 これから起こるであろう全てのことに、私は全て委ねるようにゆっくりと目を瞑った。

 この日、私たちは身体を重ねた。

 ずっと応えることに必死だった私は、あまりその時の記憶はない。気付いた時には、彼に抱きしめられながら眠っていたのだ。

 でもただ、ひとつ。

 あの時は身も心もずっと幸せに満ちていたことだけは覚えていた。