放課後。私たちは電車に乗って数駅先のショッピングセンターが集まる中心街に来ていた。

 従姉妹さんは最近お化粧品に興味があるらしく、その辺りはどうかとの暁人は考えているらしい。確かに老舗の百貨店に、それも化粧品売り場に男ひとりも入り辛いだろう。

「芽依が一緒に来てくれて、本当に心強いよ」
「光栄です。それで、どんなのにする?」
「どれを買えばいいのかさっぱり。なにがいいかな」

 化粧品が並ぶ通路を見回しながら考えてみる。今度高校生になる年齢であれば、軽く色付くリップやチーク辺りだろうか。素肌でも浮かないくらいのナチュラルな色の方が良いよなぁと考えながら、先を歩いていた彼の袖を引っ張った。

 「どうしたの?」と振り返った彼に、私は尋ねる。

「写真とかないかな?」
「写真?従姉妹の?」
「うん。出来たら加工とかアプリとか使っていない写真が良いんだけど」

 暁人は「写真なんてあったかなぁ」と携帯を触る。しばらく探した後、彼は「見つけた」と声を上げた。
 探し出してくれたのは集合写真。去年の正月に親戚で集まった時のもので、最近の写真ではないらしい。

 この子、と指をさされた女の子を見て私はふっと笑みを漏らす。

「何となく暁人に似てるかも」
「そう?まぁ2人とも母親似だけどさ」

 どこか暁人の面影を感じる従姉妹の写真。

 彼女の顔を見て、私はバームタイプのリップをオススメすることにした。チークやアイシャドウも考えたけれど、リップの方が持ち歩き安いし高級感もあるからプレゼントにはピッタリだろう。