甲斐さんの本当の姿を知ったのは、その夜だった。背中の彫り物に頭が真っ白になったけど、逃げたいとは思わなかった。眼がずっと優しかった。呼ぶ声も。

雷に怯える見知らない私を助けてくれた人を忘れられなかった。あの雨の夜を忘れられなかった。・・・誰かを好きになるのは懲りた筈だったのに。

先のことは分からない。どうなりたいかも分からない。

ただきっと。
いつも思い出す。
会いたくなる。
・・・会いに行く。

たとえいつか、運命に引き裂かれても。
待つわ。
出逢ったあの場所で。

雨の降る夜は。



Fin