キミとオジサン

咄嗟にオジサンのアパートの中に入った


「キミ、大丈夫?」


「…大丈夫…」


「大丈夫じゃないじゃん
泣いてる…

ほら…」


オジサンが
ティッシュボックスを差し出してくれた


「そんな腹減ったの?」


「ちがう…

こわかったし…
寂しかったし…

優しかった…

ホントに、行くとこなかったから…
嬉しかった…

ありがと…

ありがと…オジサン…」


「なんか、似てたから…」


「…似てた?…なにに?」


「ん?…なんでもな…

あ、昔、飼ってた猫」


そう言ってオジサンは
私の頭をクシャクシャって撫でた


「ニャー」


私が鳴きマネするとオジサンが笑った


「そぉ…鼻先が赤くて目がキラキラしてた
人懐っこくて、憎めなかった」


「なんて名前?」


「ん?…カホ…だったかな…」


「愛猫の名前、忘れる?」


「もぉ10年以上前の話だし
オレのじゃなかったから…」


そう言ってオジサンは部屋の中に入って行った