そのまま出て行こうとも思ったけれど、最後なのだからと思い返して進む方向を変える。未だに何か唸っている汚らしい、惨めな姿がこれからどうなるのかを思って思わず口元が歪む。



「残念だけど、君はこれから一生希代さんと関わることはないよ」



触れないように細心の注意を払ってその耳元に囁いてやればガタガタと激しく体を揺らす姿に湧き上がる黒い愉悦感。あぁ、癖になる。


こうしてこういう害虫共を言葉で堕としてやるのはたまらなく快感だ。



「ふふ、安心して。これからも君のような害虫はこうして僕たちが駆除するからね」



彼女の芳しい髪も、あたたかな頬もその瞳も、華奢な腕も脚も、手や指、爪のひとつでさえも触れさせない。



「そして最後にその全てを手に入れてあの愛おしい肌に触れて全てを赦されるのはこの僕だ」



くつり、と喉の奥で耐えきれなかった笑いが鳴ると同時に踵を返す。後ろから聞こえる声無き絶叫に愉快な気分になりながら倉庫を出た。