言葉にできないから。

音楽室にヴァイオリンの音が流れる。

水のように、風のように、

ゆっくりとした曲。

私が初めてコンクールで弾いた曲。

あの時はダメダメで緊張して、失敗して、大泣きして、“あの人”に笑われたなあ。

すっごい悔しかった。たくさん練習したのに失敗したから。でも、あの人に救われたかな、あの時だけ。


「初めてだから仕方ない。私はそうは思わないし、言わないけど、そこまで深く考えなくていい。失敗したって、楽器が壊れたって、世界は無くならないし、音楽は無くならないし、人は死なない。そんな音楽をしてる私たちは幸せ。世界で1番幸せよ。だからそんなに落ち込まないで。これは紅羽の大事な経験になるよ。」


【G線上のアリア】

ゆったりした曲で音出しの時間には丁度いい。

久しぶりに広いところで弾いたな。

部屋は狭いし、吹奏楽が使わない日は貸してもらおうかな、そんな事を考えていた日のこと。