その日、蓮人は私の手をひいて駅前のパンケーキ屋さんに行った。
いつの日か私が蓮人に言った人気店。

あいにく、開店してから期間がたっていて行列はなかったものの、少しだけお店の外に並んだ。
蓮人は私の体を自分のマフラーでぐるぐる巻きにして、並ばせると噂の高さ20センチの生クリームの乗ったパンケーキを頼んだ。

始終笑顔の蓮人。
私の口に付いたクリームをふき取る時も笑顔だ。

まるで私のぐるぐる答えのない、よく見えない感情を包み込むような笑顔に私まで笑顔になる。
お腹いっぱいパンケーキを食べて帰宅した私たちは母からかなり叱られた。

そして・・・私たちはその日から3か月後に卒業を迎えた。
卒業式の日、蓮人は結局高校の制服のボタンも誰にも渡さなかった。

その代わりなのか・・・
蓮人は私に自分のカフスボタンをくれた。
これは俺たちの想いでだとか言って・・・。

私はそのカフスボタンを思い出の品を入れている宝箱にそっとしまった。