蓮人の涙を私は初めて見た。

唇を離した瞬間、蓮人は自分の服のそでで目元を拭った。

下を向きながら、私の髪の続きを洗い終えるまで、何度も何度も蓮人は目元を服の袖で拭う。
こぼれて落ちそうな蓮人の涙をそっと手を伸ばして拭いながら、私は自分の瞳からあふれる涙を、そのまま流した。


こんなつらそうな、切なそうな顔をする蓮人を私は初めて見た。

だからこそ余計に胸が締め付けられる。

愛おしさだけでは乗り越えられそうもない現実。
これから私たちに待っている未来は、どんな未来なのか、拭えない不安に押しつぶされないように私たちはお互いのぬくもりを求めた。