蓮人とろくに話をしないまま、顔も合わせることのないまま、気づけば大学を卒業する年に私はなっていた。

蓮人は法学部を卒業して大学院に進む道を選び、アルバイトをやめてほとんどの時間を勉強にあてはじめた。

隣の部屋から蓮人の気配を感じる物音はするものの、蓮人自身とは同じ家に住んでいるとは思えないくらい顔を合わさなくなった。

私は・・・
~♪
鳴り出した携帯電話に、画面をスライドする。
『煮詰まってないか?』
聴こえてくるのは修平の声。
「うん。大丈夫。」
就職試験に向けて私も勉強する毎日。
卒業論文も佳境に迫っていて、なにかとばたばたとしている。