お互いに気まずい雰囲気のまま、私たちはしばらく黙る。

「バイト、どう?」
沈黙を破った私の言葉に蓮人はふっと微笑む。
「大変だよ。社会に出るってこういうことかって何となく知れた気がする。きれいごとじゃないっていうか。」
「いいなー。私もバイトしたいな。」
何となく雰囲気が和らいだような気がして、私が冗談交じりでいうと蓮人は真剣な顔になって私の方に少しだけ近づく。

「大学に行ってから、顔色悪いし、痩せただろ?体、大丈夫なのか?」
私の顔色をうかがうような蓮人の表情。
「病院、結局行ってないって母さんから聞いた。ちゃんと行かないと。」
「・・・」
私が黙ると蓮人ははっとしたかのように険しくなっていた表情を、困ったような微笑みに変えて、再び距離をとる。
「俺の言うことじゃないな。もう。」
そう言って蓮人は私の部屋を出て行った。
私はその言葉の意味が分からず、ずっと考えた。
修平という存在がいるからという意味なのか、もう兄妹で心配し合う仲じゃないと言いたいのか・・・。

わからないまま、再びほとんど顔をあわせない日々が続いた。