「紅林優莉」
名前を呼ばれて振り向くと足をとめている男が私の方を見て笑っていた。
「俺は降矢修平」
「・・・どうして名前?」
「有名だからな。美人だって。」
「・・・」
急に不信感が募って私が黙りながら後ずさりする。

「そんなに引くなよ。別に怪しいやつじゃないって。自分で言うのもなんだけどさ。」
私を電車の中で痴漢から守ってくれた男。

どこか蓮人に似ているその人は降矢修平。
人との距離が近いのが私は苦手だ。でもぶっきらぼうな言葉の奥に熱いものを感じてしまう不思議な人。

でも、蓮人に似ているからか、なぜか修平の笑顔は安心してしまう。
これは錯覚なのだろうか。
それとも・・・。