カズトの隣は

カズトの彼女で



野々瀬と仲が良い恩田だったから


俺達は自然と4人で話す事が多くなった。




きっと今、野々瀬に

1番近い男は

間違いなく―――俺だと思う。



誰よりもよく会話をして…。




だけど…


この机1個分、離れてるように


手を伸ばせば届くのに



―――…届かない。




心にも届かない。




近づきたいのに……。




そう思ってた。



それでも、1番近いのは俺だって…。



――なのに…。




俺達の後ろのドアから

正村‐マサムラ‐が入って来た。




野々瀬の……別れた男。




そして―――



今でも好きな男。




ビクッと微かに動いた野々瀬は

決してそっちを見ようとしなかった。




今まで一度も来た事がなかったのに


クラスの蒔田に教科書を借りに来た…っぽい。



『私、トイレ行って来るね』



そう言うと、返事すら待たず

野々瀬は教室から出て行ってしまった。



「……のの」



恩田が心配そうに野々瀬を追おうとした瞬間


そう言えばこの2人って

去年も同じクラスだった事を思い出した。




「恩田、ちょっと教えてくれよ」



「何?」



焦ったような苛立ったような恩田の声。



それを気にせず俺は続けた。

ハラハラしてるカズトを横目で見ながら…。



「野々瀬とあいつって

何で別れたんだ?」



「何で椎野がそんな事聞くの?」



「知りてぇからだよ」



戸惑い言うのを躊躇った恩田は

カズトを見つめたけど

カズトがいつも通り微笑んだからか

教えてくれた。