「3学期になってよく菊月さんが教室にいるのを見かけてたから、最初は手紙でやりとりをしようと思ってたんだ。でも、名前を書くのを忘れてて……それに気づいたときにはもう手遅れだったんだ」


手紙に名前を書かなかったのは、単純に葛葉くんの書き忘れで、わざとではなかったんだね。


「どこのだれなのかよくわからない人からいきなり告白されて、菊月さんがものすごく怖い思いをしたんじゃないかって思ったら、正直に俺だって言えなかった。だから、“シン”って架空の名前を使って、菊月さんと手紙のやりとりをしてたんだ。新は、“シン”って読むこともできるからね」


「そっか、そうだったんだね……」


葛葉くんの話を聞いて、やっと合点がいった。


シンくんに葛葉くんと友だちなのかを聞いたとき、答えてくれなかったのは……そういうことだったんだ。


道理で、私が“シン”という名前の男の子を知らないと思ったら、シンくんの正体が――まさか葛葉くんだったなんて。