「あっという間に教室に着いちゃったね」

「うん、そうだね」


話に夢中になっていると、いつの間にか教室に到着していた。


「じゃあね、菊月さん」


私に背を向けて、教室に戻ろうとする葛葉くん。


“じゃあね”ってことは、葛葉くんとはここで“さようなら”になっちゃうの?


そんなの……イヤだよ。


「葛葉くんっ!」


すると、葛葉くんは足を止めてこちらをふり返った。


「私、どうしても葛葉くんに伝えたいことがあるの。だから、卒業式が終わったら、私に少し時間をくれないかな?」


今日が最後の高校生活だから、悔いだけは残したくない。