「菊月さん、おはよう」


私に声をかけてくれたのは――なんと、葛葉くんだった。


「おはよう、葛葉くん」


私も葛葉くんにあいさつする。


「菊月さん、これから教室に行くなら、途中までいっしょに行こう」

「うん」


朝から葛葉くんに会えるなんて、ラッキーだ。

 
葛葉くんと他愛ない話をしながら、教室へ向かう。


「昨日まで、卒業する実感なんてなかったけど、正門にある看板を見て、少しずつ実感がわいてきたよ」

「確かに。私も同じことを思ってたよ」



私たちが卒業するまであと数時間。

すでにカウントダウンが始まっている。


それと同時に、葛葉くんとふたりきりでいられる時間もタイムリミットにさし(せま)っていた。