「――今、だれのことを考えてたの?」

「え、えっと、それは……」

「俺とふたりきりなんだから、俺のことだけ考えてほしいな」



――ドキッ……。


葛葉くんとの距離が近くなって、激しく鼓動が高鳴る。


どうしよう……。

心臓の音が葛葉くんに聞こえちゃいそうだよ。


すると、葛葉くんがクスッと笑う声が聞こえた。


「なんてね、冗談だよ」


じょ、冗談!?


そ、そっか……。

葛葉くんは集中してない私に、目を向けさせようとしてくれてるだけなのに。

なにを過剰(かじょう)に反応してるんだろう、私。