「……さん、菊月さんっ!」


名前を呼ばれて、ハッと我に返る。


「ご、ごめんなさい。少しボーッとしてしまって」


しまったぁ……。

葛葉くんが模擬授業をしてくれてるのに、シンくんのことを考えてなにも聞いてなかった。


「大丈夫? 最近、なにか考えこんでるみたいだけど……」

「うん、大丈夫! ごめんね、模擬授業を中断させてしまって」


一生懸命、葛葉くんが授業をしてくれてるんだから、ちゃんと集中しないとっ!


「ねぇ、春花ちゃん――」


先生モードになった葛葉くんが、まっすぐな瞳で私を見つめる。