「でも、菊月さんと選択授業でいっしょになって、わからない問題を教えたとき、菊月さんが『葛葉くんは教えるのがスゴく上手だし、将来は人になにかを教える職業が向いてそう』って言ってくれて。そのおかげで、俺は教育に興味を思ったんだよね」
そういえば、葛葉くんにそんなことを言ったような覚えがある。
確か……選択授業がある教室で、葛葉くんにわからない問題を教えてもらったときだ。
お世辞じゃなくて、実際にそう思って言ったこと。
「でも、結局それは葛葉くんが自分で決めたことだから、私のおかげってわけじゃないよ」
「そんなことないよ。だって、あのとき菊月さんがそう言ってくれなかったら、俺は教育に興味を持つことなんてなかった。菊月さんには大したことを言ったつもりはなかったんだろうけど、俺にとっては大きな影響があったんだよ。だから、生徒役をしてもらうなら、菊月さんがいいって思ったんだ」
葛葉くんが私を生徒役にしたのは、たまたま私が教室にいたからだと思ってたけど……。
ちゃんと考えて、私を選んでくれたんだ。