「菊月さん、お待たせ」


しばらくして、葛葉くんが教室にやってきた。


「ごめんね、来るの遅くなっちゃって」

「ううん、大丈夫だよ」


葛葉くんが私の隣に座る。


うわぁ……。

葛葉くんと距離が近いよぉ〜!


「今日教える科目なんだけど、数学でもいいかな?」

「う、うん。いいよ」


浮かれてたらダメだっ!

ちゃんと集中しないと!


「初めまして。今日から春花ちゃんの数学を担当する葛葉新です。よろしくね」


ふいに名前を呼ばれて、心臓が早鐘を打つ。

生徒役とはいえ、葛葉くんが私の名前を呼んでくれるなんて。