白い肌の上をそうっと指先が滑っていく。


触れられているのかいないのか分からないくらい微かな圧力。

それでも、触れられたところからじわりじわりと熱が広がり、濃厚な匂いが辺りに発散される。


強い力で抑えつけられているわけではないのに、身動きが取れない。

与えられる刺激にただただ声を上げることしかできなかった。

耳元で何度も

「愛している」

と韓国語で囁かれる。


「声が、、、。」



耳に吹き込まれる吐息。

話す時は少し低くなる。

脳内に響いて余韻を残す。

その声が身体の中を走り抜けるようだった。

その度に答えるように自分も声が上がる。


白い肌は全体的に冷えていたが、その肌を支配している相手は熱く燃えるようだった。

触れられる手のひらの熱。


耳元で囁いていた甘い唇は今度はキスを繰り返す。

唇に頬に首筋に、、、

途中、強く強く音を立てて吸い付き白い肌に赤い花びらを残していく。

ちょっと待って、という声も言葉にならなかった。


唇は段々と下に下がり、胸に。


「柔らかい。」

うっとりとした呟き。

苺花の程よい大きさの胸は両手で優しく包まれる。


一際甲高い声が上がる。


逃げようと身体をよじっても、簡単に引き戻されてしまう。

無駄な抵抗だった。

「逃がさないよ。

悪い子にはお仕置きが必要だよね。」


意地悪く微笑み、身体をよじった時に現れたうなじに噛み付かれる。

「んんっ!!いたっ」
苺花の瞳から涙が溢れる。

大型の肉食動物に噛みつかれたような衝撃。

きっとうなじに歯形が残っていることだろう。


そのままうつ伏せにされ、今度は背中を撫でられる。

痛みを与えた後は労わるように。

優しく。

「白い、、、白くて綺麗な背中だね。

この匂いも。。。すごく甘くて。

はぁー。。。この匂い本当に堪らない。」

熱に浮かされたようなため息混じりの声。

首筋からお尻の方まで人差し指で圧をかけながら辿られる。

耳の後ろあたりに吐息を感じる。

匂いを嗅がれているのが分かる。


恥ずかしいのにどうすることもできない。

「んーーーーーっ」

反応して背がしなる。

しなった背中にキスをされる。
何度も。

どこを触られても刺激が強くて、声が漏れてしまう。

自分のできることは声を上げて、柔らかくて手触りの良いシーツを握りしめることだけ。


「可愛い。苺花。可愛い。」

うっとりとした声。

上から覆い被されて、横から頬に唇が寄せられる。

さっきまで身につけていた衣類はいつの間にか全て剥ぎ取られていた。



男の人というのはこんなに熱いものなのか。

とキスの嵐を受けながら漠然と頭にそんな考えが浮かんだ。

背中をひとしきり愛撫された後、また仰向けにひっくり返される。

胸を両腕で隠していたが腕を掴まれて簡単に開かれる。


「隠すなんてダメだよ。」


嬉しそうに口にする。


大きな手のひらで撫でられる。

唇が寄せられる。


「、、、甘い。

どうしてこんなに甘いの?

なにかつけてる?」

またうっとりと呟く。


「ん、やぁ、、、。」

言葉にならない。

次は唇がお腹に下りる。
程よく締まったウエスト。
白くてつるつるの肌を大きな手のひらで撫でられる。


小さい臍に舌を這わせられる。

普段何の意識もしていない小さなお臍なのに、触れられるとこんなに刺激が強いものなのかと苺花が驚く。


「やっやだ、やめて。」


自分のお腹辺りで動いている頭を押さえて制止しようとするが、うまくいかなかった。

シルバーの髪の毛が肌をくすぐる。

その刺激一つ一つに反応してしまう。


頭がどんどん下に下がっていく。

苺花も自分で見たことがないような場所まで達した。

「いやーーーっ。」

両手両足をバタバタと動かして何とか抵抗しようとするが、汗をかいて更に強い香りを撒き散らすだけで何の効果もなかった。




苺花の中心。
狭く閉ざされた秘密の場所。

今まで誰にも見せたことがない場所。

そんな場所を男の人に触られている。

そんな現実が信じられなかった。


いやいやと両手で顔を隠して頭を左右に振る。

何とか逃げ出そうとするが、腰が甘く痺れていて動くことができなかった。

苺花が混乱している中で、どんどんと進んでいく行為。

「んっんっあっあっ、、、」

初めての感覚に苺花の意識が無くなりかけたところで動きが止まる。

荒い息を吐きながら、涙で曇った視界を彷徨わせる。

少し間があってから、身体を貫くような衝撃が走った。

「やっ!!!!いっった!!!あーーーーーっ!」

初めての痛み。

感じたことのない痛み。


相手も辛いのか荒い息を吐いていた。

けれど、優しくゆっくりお互いの呼吸を合わせる様にと誘導される。

呼吸が整い、徐々に身体が弛緩する。


すると、更に圧力がかかった。

嵐の夜に海の中で波に呑まれてもみくちゃにされているようだった。

意識が飛びそうで泣きながら、相手にすがろうとする。


頬を優しく撫でられる。


はあはあと息を吐きながら、それでも苺花を落ち着かせるように声をかけてくる。


「んーーーーーーーっ」


荒い呼吸音が部屋に響いている。


相手が苺花の顎を片手で掴み、目線を合わせようとしてくる。


「見て。

ちゃんと見て。

俺が誰なのか。」


見ようとしても涙で見えなかった。


涙が親指で拭われる。

反対側は舌で舐めとられる。


「俺は誰?」

「、、、んっんっ、、、ティン。」

涙声の嬌声の合間に素直に苺花が答える。

ティンがうなづく。


そう、『俺は俺だ』と。

確認している様だった。


自分の身に起きたことに精一杯で気が付かなかったが、ティンの瞳からも涙が溢れていた。

その表情にぐっと感情が込み上げてきてまた苺花も泣いていた。


両腕でティンの頭を抱きよせようとする。

ティンは素直に腕の力を抜いて、自分の頬を苺花の胸にそっと寄り添わせた。

そして苺花の顔を見上げてから深いキスをする。


苺花の肌の甘さ。柔らかさ。

自分の理性を完全に失わせる強い芳香。

この匂いに完全に支配されている。


ティンもまた初めて味わう感覚の波に揺蕩うていた。


「あ、、、。」


声を上げたティンが、ぎゅっと苺花を抱きしめてから隣にゴロンと横になる。

お互いの汗で熱いのか冷えているのか分からなかった。

仰向けに寝転んだ2人はゼエゼエと荒い息を吐いていた。


しばらく天井を見つめていた2人だったがら呼吸が整ったティンが苺花を抱き寄せ胸元に顔を埋める。


ティンの頬の熱を感じる。


そこから愛しさが身体の隅々まで広がるのを感じていた。

愛しいという言葉はこういうことなのか。

感覚でそれを理解した瞬間だった。


「、、、ありがとう。苺花。

俺を受け入れてくれて。

俺、やっと自分が生きているって実感したよ。」


心からの素直な言葉だった。

ずっと苦しみを抱えていたティン。

自分は人間ではなく商品だと意図的に思い込んできた。

デビューからの華々しい全ての出来事が自分の周りに張り巡らされていた壁の外で行われるような感覚だった。
本当に自分の身に起こっていることなのか、分からなかった。

その壁が、今全て取り払われて解放され、現実の自分の身に起こったことだとやっと実感できたのだった。



不思議な感覚だった。

生きている。

全身を血液が駆け巡っている。

それをただただ感じていた。


苺花は何も言葉を発することができなかったが、そっと自分の腕でティンの頭を優しく抱きしめた。

慈愛に満ちた自分の内なる母性を感じて満たされていた。

そしてそのままゆっくりと瞳を閉じて意識を手放したのだった。



 ティンは眠りに落ちてしまった苺花の髪を撫でる。


まあるいほっぺ。

人差し指を折り曲げてそっとその背で撫でる。

寝てしまうとさらに幼さを増す顔。

くーくーと寝息を立てているのも無防備で可愛い。


涙の跡。

それもそおっと指先で拭う。


撫でていた手を頬から首筋にそして肩へと滑らせる。

柔らかくて吸い付くような白い肌。

いつまでも触っていたくなるような手触りだった。

女の子の肌というのはなんでこんなに柔らかくて手触りが良いのだろうか。

自分とは全く違う生き物だと改めて認識する。


「はぁー。」


とうとう手に入れてしまった。

出会ってからずっと欲しくて仕方なかった。

今はティンが望めばなんでも簡単に手に入れられるはずなのに、苺花だけは本当に難しかった。


これで自分の物だと、先ほど付けた赤い印の数々にそっと指先を当てていく。

うなじも髪の毛をかき上げて確認する。

細い首の根元に、綺麗な歯並びがくっきりと分かるくらい歯形がついていた。

「これはやりすぎた、、、。

ごめんね。」


白い肌に傷を残してしまったようで後悔する。

チュッと歯形にキスをする。

首筋から苺花の匂いをうっとりと吸い込む。



、、、まるで毒だ。


この匂いを嗅いだら、理性など簡単に吹き飛ぶ。


熱に浮かされて夢中になってしまう。



先ほどの行為を思い出していた。

と、同時にまた自分の中の欲望の渦が大きくなってきたので鎮めようと深呼吸を繰り返す。

嵐のように苺花の身体を奪ってしまった。

彼女もきっと混乱のまま自分を受け入れただろうから、これ以上望むのは無理なことだとは分かっている。

それでも湧き上がる喜びは大きく今まで感じたことがない満足感で満たされていた。



小さな身体を抱き寄せてもう一度唇にキスして、苺花の顔を見ながらほっとため息をついた。

とろりと眠気が襲う。

いつも不眠気味のティンだったが、苺花と一緒の時は夢も見ないくらい深い眠りに誘われる。

心が満たされて、とても安心していた。

やっと手に入れた。

今はその満足感でいっぱいだった。