いつも家に着いたら「約束」の雨を降らせてみようとしてるけど、今日は止めた。
僕は家を出て、美優を待つ。
数分待っていると、美優がこちらに手を振って走ってくる。
「遅れてごめん!」
「全然遅れてないから、大丈夫。どうぞ入って」
「お邪魔します」
美優が目の前に座ったところで僕は、過去のことを話し始めた。
僕と美優は、今から5年前に会っていた。
僕がまだ東京に住んでいた時、東京に遊びに来ていた美優と公園で会った。
「ねぇねぇ、今何してるの?」
「え、考え事」
「そうなんだ。なに考えてるの?」
美優は優しく笑ってこっちを見ている。
こんなに気持ち悪い僕に、あんなに優しくしてくれて。
学校でいじめられてるなんて言えるわけがなくて、咄嗟に思いついたものを言った。
「今日の晩飯」
「他は?」
美優に嘘はバレバレだった。
「ちょっと、聞いてもらっても、いい、、、?」
「もちろん!何でも聞く!」
初めて人の前で泣きそうだった。
そのとき、僕が悩んでた事、全部全部真面目に聞いてくれて、僕を励ましてくれた。
この世にこんな素敵な人いるんだって思った。
「あの、名前、何ていうの?」
「藤咲美優っていうの。美優って呼んで」
彼女はゆっくり微笑んだ。
でも、僕の名前は教えなかった。
いつか、どこかで恩を返したい。
幸せにしたい。
僕は人生で初めて、
――好きな人ができた。
僕はその日の出来事を神様に話した。
僕は、人間だけど、神様と話す力を持っていた。
10歳のとき、それに気づいた。
*
「そして、今日、美優に救われました。必ず、どこかで恩を返したいです」
「あなたは、今から5年以内に彼女と出会います。そのときに、幸せの桜の雨を降らせなさい。雨を降らすことが出来るのなら、必ず出来ます。」
そのときから、僕の目は桜色になった。
彼女に会ったら、美優に会ったら、桜の雨を降らせよう。
そう決めた。