私は透真に、「放課後空いてる?」と聞かれた。

いろいろと聞きたいことがあったので、少し考えてから「うん!」と答えた。



この日は、昼にやっと雨が止んだ。

まだ湿気が多くて、髪がボサボサになっていたので、ヘアアイロンで髪をまっすぐにしてから家を出る。






「おまたせー!やっと雨止んだねー」

「うん。そうだね」

めずらしく、少し不器用な笑顔で言った。

晴れが好きではないのだろうか。

「えっと、あの、透真って晴れ、好きじゃないの?」

小声で質問をした。おかしな質問をしているようで、少し怖かったが、透真は笑って口を開いた。

「それはないよ!晴れの日って空が明るくてすっごく綺麗でしょ?晴れの日の空が大好きでよく絵に描いているよ」

私は上手く笑えているか心配になりながらこくこくとうなずいた。






しばらく透真と話しているとだんだん空が暗くなってきた。

「帰ろうか。」

「そうだね。じゃあまた明日ね!」

透真は大きく手を振って、私に背を向けた。


もう高校生にもなったのに、一人になって寂しくなる。。

私も透真に背を向け、歩き出す。


すると、後ろから誰かの足音が聞こえた。

振り向くと、大学生くらいの男が立っていた。

「おい」

「な、なんで、すか」

駄目だ。殺されるんだ。私は、今日で死ぬのかと本気で思った。

「なにこっちみてんだよ」

「はぁっ、はぁっ、ご、めん、な、さい」

恐怖のあまり声が出なくなる。心臓が大きく音を立てる。


「なんだよ、お前は園児か?喋れないのか?」


「あっ、、、」


頭を掴まれ、顔を上げさせられる。


痛い。怖い。逃げたい。苦しい。助けて。

いろんな感情がぐちゃぐちゃになって涙が溢れて前が見えなくなる。

誰か、誰か、、、。



ずっと願っていると、誰かが走ってくる音がする。



「美優に、何してんだよ」

「あ?なんだよお前」

「、、、と、うま」

透真が男の声に気づき、助けに来てくれたのだ。

しかし、その透真は、私が知っている透真とは違った。

ひどく怒っている。

彼からブラックホールのような黒いオーラが見える。

すると、男は、私から手を放して、透真を見る。

「お前は関係ねーよ」

「うるせぇ」

透真が低い声で言う。

「あ?高校生が調子乗んな!」

すると、透真は男にゆっくり近づき、ものすごい勢いで男をなぎ倒す。

「ぐぁっ!いってぇ、、、お前、覚えてろよ」

「もう二度と、美優に近づくな」


男は走って逃げていった。

警察を呼ぶことよりも、早く透真にお礼がしたかった。

私はゆっくり立って、透真に駆け寄ると、透真は走ってこっちに来る。

「美優!大丈夫!?」

いつもの優しい声だった。すごく安心して、その場に崩れ落ちる。

「美優!?」

「怖かったー、ほんとに、ありがとう」

「いえいえ、昔喧嘩ばっかしてたからさー」

「だからあんなに強いんだね」

私が透真の強さに驚いていると、スローモーションのように手が伸びてくる。

「立てる?」

「え!あ、立てる!大丈夫」

とは言ったものの、立とうとすると、すぐに足が曲がって地面に手がついてしまった。

「ほら、立てないじゃん。ね、手掴んで」

顔が熱かった。こんなことをされるのは初めてなので緊張する。

「あ、ありがとう」

「早く気づけなくてごめんね」

「あ、わ、私、、、ぜ、全然、あの、私のせいだからっ、、、!?」


突然、両手を温かい透真の手に包まれた。

「嘘つけ、美優は嘘が下手だね」

透真は、いつもみたいに、桜の花が開くように笑った。

私は下を向いて涙が出そうなのをこらえる。

透真は、私が上を向くまで背中をさすってくれた。











このとき、透真は優しくて、強い人だと確信した。