学校に着いた。

なんだか、昨日よりも歩いている時間が長く感じたな。



教室に着くと、透真が一人で本を読んでいた。

「あ、美優。おはよ」

「うん。おはよう」

「なんか昨日と顔変わった?」

「え?いつもこんなだよ?」

「そうかなー?」

え、クマがあるとか、、、?!

「いつも通りだよ、普通普通」

「いやー、昨日と違う気がするなー」

「なんでだろう」

「寝不足とか?」

「いや、それは絶対にないな」

「あれ、じゃあなんだろうなー」


透真が腕を組んで考え始める。

果たして、私が気にしていない問題を自分ではない人がそこまで考える必要があるのだろうか。

「なんでそんなに私のことを考えてくれるの?」

「だって、美優は僕にとって特別だから、かな」

「え?どういうこと?まだ会ってすぐなのに?」

透真が言っていることが理解できず、頭の中は「?」でいっぱいだった。

「うん。そうだよ」

すると、同じクラスの男子3人グループが教室に入ってくる。

「あ、おはよー」

「えぁ、おはよ」
「おはようございます。」
「おはよー」

また話したことない人達に挨拶してる。

人が来たということは、そろそろみんなが来る時間だ。

机に本を出して、右手の小指をさすってから読み始めた。






「えー、簡単に自己紹介をしたいので、今からやる私の自己紹介を参考に自己紹介をしてください」

「うわっ」

自己紹介という言葉を聞いて小さく声が出てしまう。私は昔から人前で話すのが嫌だった。だから、自己紹介は嫌でしかたなかった。

「私は、伊藤茉奈です。担当は、数学です。趣味はテニスをすること。今年は、筋トレをして、筋肉を鍛えたいです。一年間、このクラスで楽しんでいきましょう。終わります。」

全員が先生の方を見て拍手をする。
みんなにみられること。それが嫌だった。


「こんな感じで簡単にお願いします。じゃあ、くじで当たった人から自己紹介をしてもらいます。」

先生が出席番号が書かれたくじを引く。
私は一番最初にだけは来ないでと手を握りしめる。

「えー、藤咲さんお願いします。立ってください」

最悪である。強く願い過ぎたからか、一番最初になってしまった。
しかし、もう話すしかない。

「えっと、藤咲美優です。好きなことは、読書で、えっと、、、」

話すことに困っていると、斜め前の席の透真がこちらを見て、小声で私を呼んだ。

「美優、先生と同じようなことを言えばいいよ」

私は「ありがとう」と言って自己紹介を続ける。

「あ、えっと、今年は、物語を、書いてみたいです。あ、ありがとうございました」

「はーい。物語が完成したら先生に読ませてくださいね」

先生は微笑んで私を見る。
そして、みんなが拍手し始めた瞬間に席に着いた。

「次は、えーっと、音瀬君」


「はい。音瀬透真です。僕はよく空の絵を描いています。本を読むのも好きです。僕は、天気の勉強をしているので、天気のことなら何でも聞いてください。よろしくお願いします。」

私は透真に聞こえるように拍手をした。
人前でもこんなにはきはき話せるのが羨ましい。

「透真、天気のこと勉強してるんだー」

「そうそう。面白いよ」

「もう頭の良さを伝わってくる」

「いやいや」

透真と話していると、先生がくじを引く。

それから、約40人の自己紹介が続いた。



透真は最後まで真剣にみんなの自己紹介を聞いて、大きな拍手をしていた。















音瀬透真は不思議だ。