「そんな怖くないだろ」
「怖いよっ!苦手だからホラー絶対見ないようにしてるのっ……うぅー…怖い画面見ちゃった……」
琴音はむぅとしながら抱き着いた俺の腕をぎゅっと掴む。
…今すぐに全力で抱き締めたい。
ダメだ、抱き締めたら琴音の事押し倒して手を出す自信がある。
「……そ、そうだ!布団!琴音の布団用意しねぇとな!?」
折角琴音から俺に掴まってくれたのに、勿体ないが立ち上がって琴音の布団を敷く事にした。
「あ…私も手伝うっ」
「大丈夫だから!ここで待ってて!」
来客用の布団を取りに行って布団一式を取り出した時ふと頭の中を考えが過ぎる。
琴音が寝るところは俺の部屋で良いのか…?
仮とはいえ一応付き合ってるし。
………。
俺はスマホを取り出して哲哉に電話を掛けた。
何でも哲哉に聞いてしまうのはいつもの癖だった。
「もしもし?どうしたの?」
「あー…なんつーか、相談?」
「何?」
「今琴音が泊まりに来てるんだけどさ…」
「……自慢?」
「違っ…」
やべぇ……いつもの癖で哲哉に掛けたけど、哲哉も琴音の事好きな事忘れてた…。
琴音は俺の中では最強に可愛いけど、まさか哲哉まで好きって本当なんだろうか?
「まぁいいや、嵐もまだ正式に付き合ってるわけじゃないからね…で、何?」
「その……いや……こういう時って俺の部屋に寝かせていいのかと……」
「は?」
電話越しでもわかるくらい低く、怒りの声が聞こえた。
「だ、駄目に決まってるよな!?分かってたよ?分かってたけどな?一応確認したんだ!」
「………一緒の部屋でいいんじゃない?」
「え?」
「今後の為にも三神さんが近くにいても色々我慢する練習した方がいいよ」
「んな練習なんかいらねぇだろ!意志の問題じゃねぇの!?」
「三神さんとあんな事あったくせに抑えられる自信あるんだ?」
「それは……んー…っつーか、電話した俺も俺だけど…哲も琴音が好きなんだろ…?そんな事言って良いのかよ」
昼間は急に恋のライバル発言してきたけど、何だかんだで俺の事応援してくれてるんだな…
「全然いいよ、嵐が我慢して一晩中苦しむの面白そうだし」
「ハァ!?人の不幸楽しんでんじゃねぇよ!別の部屋でぐっすり寝るからな!」
「ハハッ…そうだ、来月のシフト早く出してね」
「明日出すよ!じゃあな!」
そう言って電話を切ってやった。



