春色の恋−カナコ−[完]

背中に当てた頬も気持ち良くて。

「さ、カナコちゃん。このままじゃ俺が帰せなくなっちゃうから、行こう」

そっと私の腕が河合さんの体から離されて。

今度は私の右手を、河合さんの左手が包んでくれた。



河合さんの車の中では、いつものように楽しいお話をたくさんしてくれて。

家までの短い距離が、もっと短く感じてしまう。

あっという間についた我が家の前で降ろしてもらい、運転席から降りてきた河合さんが門の前でそっと私を抱き寄せて。

「次は週末にゆっくりと」

耳元でそう囁くと、そっと私を開放してくれた。

「おやすみ。いい夢を」

きっと、耳まで赤い私だけど。

おやすみなさいと伝え、家の中へ入ると、ばたん、とドアのしまる音がして。

しばらくしてからエンジン音が遠ざかって行った。