春色の恋−カナコ−[完]

「もぉー」

きっと、私が考えていることはすべてお見通しで。

いつもこうして、私の機嫌が悪くなるとかわいいと言って抱きしめてくれる河合さん。

「ずるいですよ」

「はは。俺ね、料理が好きでね、これでも調理師免許なんて持っているのよ」

「えっ!」

予想外の言葉に、河合さんの胸に押し当てていた顔を持ち上げ河合さんを見上げると。

優しい目をして私を見ている河合さんがいて、ちゅっと音を立てておでこにキスをされた。

「カナコちゃん、好きだよ」

そっと触れあった唇。

あっというまに離れてしまったそれを、もっと、と求めてしまう私。

「はは。食後にたっぷり、ね?」

再びちゅっと音をたてて一瞬だけ唇に触れると、頭をくしゃくしゃっとなでられた。

「もぉー」

いつもこうしてごまかされてしまう。

本当は今日は私が料理したかったのに。