春色の恋−カナコ−[完]

「カナコちゃんは何が食べたい?ってか何が作りたい?」

駅から河合さんの家へ向って歩く途中にあるスーパーに寄り、野菜売り場をうろうろしながらメニューを決めかねている。

かごは河合さんが持っていて、きっと私が決めるのを待っているんだ。

「コウスケさんが食べたい物でいいのに…」

なかなか決まらないメニューに、うーんと唸りながら玉ねぎを一つかごに入れた河合さん。

「じゃあハンバーグで」

にっと笑うと次から次へと材料をかごに入れ、最後によく冷えたビールを2本かごに入れるとレジへと向かった。

「慣れてますね」

一緒にスーパーへ来たのは初めてじゃないけど、手際のよい買い物に見とれてしまって何も言葉が出てこなかった。

「あ、ほしいものとかあった?」

「いえ、ないです」

一人暮らしが長かったらしい河合さんは、料理もとても上手で。

以前お邪魔した時は美味しい料理を作ってくれた。

私はというと、本当に基本的なことしかできなくて、特別おいしいものが作れるわけでもないけど。

でも、お母さんたちがアメリカへ行ってから2年ちょっと。

おにいちゃんと二人で生活していた間にかなり上達したと思う。