春色の恋−カナコ−[完]

握られた手を、子供のようにぶんぶん前後に振りながら歩く河合さんがかわいくて。

つながれた手にぎゅっと力を入れると、同じようにちょっとだけ力を入れて握り返してくれる。

そんなことがうれしくて、手を振られているのも嫌じゃない。

「お腹空かない?何か食べに行く?それとも家で食べる?」

お兄ちゃんと同じで仕事の忙しい河合さん。

つい先日引っ越してきたばかりで、ゆっくりと二人きりで過ごしたことも数えるほどで。

デートっぽいデートも、実はほとんどしたことがない私たち。

「あ、じゃあ、私作ります」

「お、いいねー」

少し駅前をぶらぶら歩いてから、電車に乗って河合さんの家へ向かう。

私の住む街へ引っ越してきた河合さん。

同じ駅で乗り降りして、偶然ばったりなんてあるかもと、実はひそかに期待している私。

「夕飯は何がいいかな~」

電車の中でも、降りてからも、ずっとつながれたままの手。

今更ながら緊張してちょっと汗ばんじゃっているんだけど・・・。