春色の恋−カナコ−[完]

当時のことを急に思い出し、嬉しくて滑り台へ駆け寄る。

すっごく大きくて、一人で登るのが怖いくらいだったのに、こんなに小さかったんだ。

狭い階段を上って滑り台の頂上へ来ると、下からおにいちゃんが見上げていて。

「上に登るとやっぱ高いね!」

少し狭いけど、滑り台を滑り降りるとおにいちゃんが手を差し出して立たせてくれた。

「カナコがさ、怖いから一緒に行こう!って何度も一緒に登ったよ」

「えー、そうだっけ?」

本当は覚えているけど、ちょっとだけ恥ずかしくて知らないふりなんてしちゃって。

「いつか、カナコも自分の子供を連れてここへ来るんだな」

「おにいちゃん」

昨夜、寝る前に河合さんとどんなお話をしたの?

お母さんもおにいちゃんも、今すぐにでも私がお嫁に行ってしまうような言い方をするけど。

なんだか実感もないし、具体的にいつって決まっているわけでもないから。

「カナコはそのままでいいんだよ。向こうのご両親に気に入られるといいな」

「うん。そうだね」

まだお会いしたことのない河合さんのご両親。

どんな方たちなんだろう?

近いうちに挨拶に行くって河合さんが言っていたから、きっともうすぐ会えるはず。

懐かしい思い出話をしながら帰宅すると、お母さんが朝食を作っていて。

おにいちゃんと順番にシャワーを浴びて着替えると、河合さんも起きていた。