春色の恋−カナコ−[完]

お父さんも気に入ってくれると思うよ、河合さんのこと。

その日の夜は少しだけわがままを言ってお母さんと一緒に眠った。

おにいちゃんには「疲れているんだから」って怒られたけど、女だけの話を聞いてほしくて。

お父さんは文句を言いながらも私の部屋で寝てくれたので、寝室でお母さんと二人。

来週にでも河合さんを我が家へご招待することになったので、明日にでも河合さんに確認しなくちゃ。

長旅の疲れからか、いつの間にか隣から寝息が聞こえてきて。

「お母さん、お休み」

私も、久しぶりのお母さんを満喫してぐっすり眠ることができた。



「はじめまして。河合コウスケと申します」

「まあ、どうぞどうぞ」

お母さんとお父さんが帰国してから一週間。

家の中も何とか片付いて、河合さんが家まで来てくれた。

ぴしっと決めたスーツに、仕事帰りに会うのとはまた違った雰囲気ですごく素敵。

でも、スーツってことは、やっぱりあれだよね?

「お父さんとお母さんにきちんと挨拶する」としか私には言ってくれなかったけど。

スーツ姿の河合さんを見て、おにいちゃんが小さなため息をついたのも見逃さなかった。