春色の恋−カナコ−[完]

私に気がついた河合さんが助手席のドアを開けてくれて中に入れてくれる。

遅くなったことを謝りシートに座ると、すっと河合さんの手が伸びてきて、頭をなでられた。

「お疲れ様。忙しかったの?」

「うん、少しだけ」

お昼から少し仕事をやれる状況じゃなかったから、結果遅れたなんて言えない…。

でも、こういうことはきちんと話さないとだめだよね。

「あのね、コウスケさん」

「うん、どうした?」

車を発進させ、私の家へと向かう河合さんに、今日の昼休みの出来事をすべて話した。

本当は辛くて口に出したくなかったけど、このまま私が黙っていたところで何の解決にもならないし。

途中涙が出そうになったけど、車を近くのコンビニの駐車場に止めて静かに私の話を聞いてくれた。

「カナコちゃん、ごめんね」

車の中で、ぎゅっと私を抱きしめてくれた河合さん。

今日、会社でおにいちゃんと共に上の人に相談したらしく、午後から佐藤さんも含めて話し合いになったらしい。

その席で、佐藤さんは河合さんが支社にいたときから好きだったこと。本社へいってからも忘れられなかったことを皆の前ではっきりと言ったらしい。

河合さんが居ないと、駄目なんだって。

「でも、俺はカナコちゃん以外考えられないから」

皆の前で、佐藤さんにははっきりと断りを入れたという河合さんだけど。

お昼休みの電話は、その話し合いの前にかかって来たんだ…。