春色の恋−カナコ−[完]

「ごめんなさい…」

「謝らなくてもいいよ。浅野さんが悪いとも思えないし」

昨日の出来事を簡単に説明すると、岡本部長は小さくため息をついて私を見た。

「警察には?」

え?警察?

警察と聞いてドキッとしてしまうけど、怪我をしたわけでもないのに警察?

「いえ、そんな…」

「被害が出てからでは遅いからね。彼氏に自分で話せる?」

「え、それは…」

電話の件は、やはり河合さんに話をするべきなんだろうか?

心配をかけるだけだし、忙しい河合さんに迷惑をかけたくない気もする。

「こういうことはきちんと話さないと、何かあってからじゃ遅いから」

「…はい。今日、迎えに来てくれるので、その時に話します」

そうだよね。河合さんも何らかの対応を考えているはずだし、何よりもこんな怖い思いをするのはもうたくさん。

「今日はずっと事務所にいるから、何かあったらまた教えて」

「はい、ありがとうございます」