春色の恋−カナコ−[完]

ふと携帯を見ると、メールが届いていて。

『変わりないかな?』

河合さんからの短いメールに、再び涙が溢れそうになったけど。

泣いていてもはじまらないし、岡本部長に迷惑をかけたことだけ謝りに行こう。

昨日頑張ったから、今日は急ぎの仕事はないけど、できれば今日中に終わらせておきたい仕事もあるし。

お弁当や化粧ポーチをかばんにしまい、会議室を出ると事務所には岡本部長しかいなくて。

よかった。

今日はまだ皆外出したままなんだ。

こういうとき、外へ出る人の多い会社でよかったと思う。

「あの、部長」

「ああ、もう大丈夫?」

書類に目を通しながらちらっと私を見て笑いかけてくれる岡本部長。

「ご迷惑をおかけしました。あの、もう大丈夫ですから」

「もうすぐこれが終わるから、少し待っててくれる?」

「え?」