春色の恋−カナコ−[完]

お昼休み、お弁当を食べるためにソファに移動して。

ほとんどの人が外出しているので、事務所で一人お昼を食べていた。

食べ終わってコーヒーを飲んでいると、会社の電話がなって。

慌てて出ると、女性からの電話だった。

『浅野さん?』

え、誰?

電話に出たときに名乗ったから、私の名前を知っていてもおかしくないけど。

でも、この声…。

『カナコ、ちゃんでしょ?』

やっぱり。

どうして私の勤め先を知っているのかわからないけど、電話の相手は佐藤さんで。

『ねえ、河合君と別れてよ』

ディスプレイに出ていた番号は、公衆電話ってなっていたはず。

どこからかけているのか分からず、身体が震えるのがわかる。

「ご、ご用件は?」

できるだけ平静を装っていても、明らかに声は震えていて。

どうしよう、どうしよう!?

『私、河合君じゃなきゃだめなの。河合君と別れてよ』