春色の恋−カナコ−[完]

「ただいま、カナコ」

いつも通り、普通なおにいちゃん。

「お、おかえり!今ご飯の支度するね」

あわてて立ち上がり、キッチンへ向かいおにいちゃんの夕飯を温めなおす。

どうしよう、どきどきしちゃっておにいちゃんの顔が見れないよ。

しばらくして、部屋着に着替えたおにいちゃんがキッチンへ戻ってきて、冷蔵庫から缶ビールを1本取り出した。

「今日、河合はもう少し時間がかかると思うよ」

「え?」

缶を開け、ぐいっと一口飲んでからそんなことを言って。

思わず、背中を見せていたおにいちゃんを振り返ってしまった。

目が合って、顔が赤くなってしまう。

「なに、名前聞いただけで赤くなってるの?」

くすくす笑いながら、私が出した夕飯に頂きますと手を合わせてから箸をつけた。

おにいちゃんは、私に見られたこと気が付いていないのかな。

一人赤くなっている私を笑いながら、美味しいとごはんを食べているおにいちゃん。

ねえ、さっきの人は誰?恋人でしょ?