春色の恋−カナコ−[完]

いつものスーパーに寄って週末の分まで食品を買い込み、重い荷物を持って帰宅した。

今日の分を除いて冷蔵庫に入れ、部屋着に着替えてから夕飯の支度をする。

下準備ができたところでおにいちゃんからメールがあり、今日中には帰れそうと書いてあった。

週末は休めそうなんだ。

私も遅くなって少し前に帰宅したことをメールしてから、料理を仕上げ、おにいちゃんの分だけいつでも食べれるようにラップをしてから一人の夕飯を食べた。

なんとなく付いているテレビからは、人気の芸人さんがコントをやっていて。

一人で静かなリビングを、テレビだけが賑やかにしてくれていた。

食べ終えてからお茶を飲んでいると、家の電話が突然なりだして。

「え、こんな時間に電話?」

普段、鳴ることのない電話が、夜遅い時間になるとドキドキしてしまう。

あわてて受話器を持ち上げると、相手はお母さんからだった。

『カナコ?元気にしている?』

「うん、変わらないよ。どうしたの?」

普段、急用がない限りは日曜日の夜にしか電話はかかってこない。

急ぎじゃないとメールで連絡を取り合ったりもしているので、こうして電話がかかってくるのは今まで数えるくらいしかなかったと思う。