春色の恋−カナコ−[完]

「ありがとうございます」

先輩に入れてもらったコーヒーなんて、申し訳ないけど疲れた時に甘いコーヒーは嬉しい。

「よく頑張ったね。無事に終わってよかったわ」

去年までは一人だったからとても助かったのよ、なんてやさしい言葉をかけてくれて。

それだけで疲れがどこかへ飛んで行ってしまった気分だ。

「ひと段落ついたし、また来週からは平常に戻ると思うから」

週末はゆっくり過ごしてね。

そう笑顔で私に話しかけてくれたあと、急いでいるのか藤井さんは帰り支度を始めた。

私も早く帰って、夕飯にしよう。

こんな疲れた日は簡単に済ませたいところだけど。

私よりも頑張っているおにいちゃんに、ちゃんとした食事を作ってあげたい。

「お疲れ様でした」

まだ事務所に数人残っている営業さんたちに挨拶をして、会社を出た。