春色の恋−カナコ−[完]

河合さんとおにいちゃんに、それぞれハナちゃんと出かけることをメールすると、ほぼ同時に「気を付けて」と返事が来て、笑ってしまった。

なんだか、おにいちゃんが二人いるみたい…。

午後からの仕事は順調に終わり、定時で上がることができた。

待ち合わせの時間まで、駅前のショップをいくつか見て回り、一目ぼれしたワンピースを買ってしまった。

今度、河合さんとデートするときに着て行こう。

駅の改札前でハナちゃんが来るのを待っていると、鞄の中の携帯が震えて。

あわてて取り出すと、河合さんからの電話だった。

「もしもし?」

『カナコちゃん?今いいかな?』

どこか賑やかな場所から電話しているようで、いつもよりも少し声が大きい 河合さん。

「はい、大丈夫ですよ。今駅前で友達を待っているんです」

約束の時間までまだ10分くらいあるので、休憩時間に電話してきてくれたという河合さんと少しだけ話をすることができた。

『週末は、休みだからどこかへ出掛けよう』

うれしい。

こうして約束してくれるだけで、残りの平日を乗り切れるような気分になる。