すずめがないてる、、
あ、もう朝なんだ。
半年前は、このスズメの向こう側に
優しい君の声が聴こえたのに。
いまは、私の悲しい涙が頬をつたうだけだった。

それでも朝は来る。
ただそこになかったのは、君のぬくもりときれいな明星だけだった。

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薄いレースのカーテンを開ける。
太陽は「おはよう」と告げた。
青い空。
まぶしい。
窓を開けるとすーっと涼しくなる。
雲が風に流されてふわりと笑いかける。
下ばかり見ていられない。
今日も鏡の前で頑張って笑顔をつくる。
よし、笑えてる。
私の一日は、笑顔作りから始まる。


玄関を出た瞬間から、そこは私には生きいづらい世界だ。
最寄りの駅まで約50分の長い長い道のり。
そんな道をずっとずっと眺めながら私の一日は始まるのだった。
行き交う人はみんな前を向いて急いでいる。
電車の時間かな、遅刻ギリギリなのかな。
そんなことを考えながら、参考書を眺めながら歩く。


今日の夜は星が見えるだろうか。
この曇り空じゃ見れないな、なんて思う。
私の心を映したようなそ驚くほど、どんよりしていた。
どこかの偉人は、明けない夜はないといっていた。
でも、私はあると思う。
誰かのことで頭がいっぱいで寝れない夜もあって
寝れない夜は気分も沈んだままで、
迎えた朝は、きっと明けても明けてない夜なんだ。

長い長いこの電車はけんをまたいで都心へと人をいざなう。
カタンコトン揺られながら、この電車はいろんな人を
いろんな場所へ連れていく。
突然特急電車が小さな無人駅で止まった。
どうやら一本前の電車がこの先の踏切で人身事故を起こしたらしい。
車掌はため息をつきながら、振り替え輸送の案内を始めた。
隣の人は腕時計で時間を確認しながら、迷惑だな、とつぶやいた。
きっと踏切で飛び込んだ人は、色々抱えていたんだろう。
今日までその荷物を一人で背負い続けていたんだ。。
その荷物を肩代わりしてくれる人も分け合える人もいなくて
きっと一人で苦しんでいたんだ。
その人の心の孤独さを考えたら、苦しくなった。
みんなが呆れたり怒ってる中で、私はその人に
かけてあげたい言葉があった、
お疲れさま。もう自由だよ。
電車は、しばらくすると何事もなかったかのように
また運転を再開した。
そんな特急電車は、私を終点まで乗せるとまた来た線路を
折り返してたくさんの人を運んで行った。

どうして世の中はこんなに理不尽であふれているんだろう。
こんなはずじゃなかった。
もっと明るい未来が待ってると思っていた。
現実を一つ知るたびに嫌になって、苦しくなって。。
でもいつしか諦めることを覚えて、それが普通になっていく。
そんな中で私も何とか生きてる。

でも今日はいつもよりも足が重かった。
いや、今日に始まったことではない。
部活を引退してから、周りはどんどん受験モードになってった。
毎日の授業も新しいことを知る授業から反復の過去問演習へと変わった。
みんなの笑い声が響いていた教室では、参考書をめくる音しか
聴こえない重く焦りを感じる空間になっていった。
大量にカバンの中にある進路資料は、私には怪物に見えた。
「あなたは勉強量が足りなすぎる。そんなんで大学受かった人なんて
 私は聞いたことないわ。受験生の自覚をもちなさい。」
ホームルーム終わり、担任は私にそう告げた。
そんなことは私が一番よくわかっている。
ただただ心が日常についていけなくて苦しかった。

滑り止めの大学の公募推薦の入試まであと5日。
私は、小論文も面接練習も担任に頼まなかった。
どうしてもあんなことを言った担任が許せなかった。