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「へぇ〜、それは災難だったねぇ。だから今日来るの少し遅かったんだね?」
「そうなの。久しぶりにヒヤヒヤした」
お昼休み。親友の奈子と向かい合って、私はお弁当箱の蓋を開けた。
いただきます、と手を合わせて卵焼きをパクリと一口。
「……あっ、どうしよう」
「どうしたの?」
「お箸忘れちゃった……」
「私割り箸持ってるよ」
スクールバッグの中から予備の割り箸を奈子に渡す。
そんな私に、奈子は大きな瞳をさらに見開かせて「すごいねぇ」なんて。
「澪ちゃんって、お母さんみたい」
「何言ってんの……あ、カーディガン!袖!汚れちゃうよっ」
「そーいうところだよ、澪ちゃん」

